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建築・住宅誌 編集長インタビュー

第11回

「新しい住まいの設計(扶桑社刊)」編集長 鈴木康之氏
家作りはこれからの人生を考えるいいきっかけに。
さまざまな実例を見て、住み手の声に耳を傾け、疑似体験を重ねながら、
幸せな物語が始まる家を建てて欲しい。

「新しい住まいの設計」は、これから家を建てようとする人を読者ターゲットとする月刊住宅誌。毎号、その特集にあわせて約20軒の建築家設計住宅を厳選し、写真や図面、データ、家づくりにまつわるエピソードなどの読者が求める情報を、余すところなく紹介する。また建築家との家づくりだけではなく、ハウスメーカーの家や、建築家コンペで建てられた家の情報も掲載し、さまざまな家づくりのスタイルを紹介するところも特徴だ。同誌の編集長をつとめる鈴木康之氏に、『新しい住まいの設計』が、家づくりを考え始めた読者に伝えたいメッセージ、そしてこれからの住宅業界について、お話を伺った(聞き手:ハウスコ松原)

2008年11月号で、創刊48周年を迎えられる「新しい住まいの設計」ですが、そのコンセプトを教えてください。

家を建てようと思った人に、まず最初に手に取ってもらえる雑誌でありたいと考えています。住宅雑誌って、マタニティ雑誌にすごく似ていると思うんです。病院に行って妊娠を知らされると、妊娠・出産のことをちゃんと知ろうと、今まで見ることもなかったマタニティ雑誌を手に取る。それと同じで、夫婦でそろそろ家を持とうとか、両親との同居の話がでても、具体的にどんな家を建てたらいいか分からない。そのとき、自分たちにとっての「建てたい家」「これからの人生を過ごしたい家」を具体化していく手助けができたらと思って編集しています。

創刊当時は高度経済成長の真っ只中で、学校を出たら、いい会社に就職し、結婚をして郊外に一軒家を持つ、というのがひとつの目標でした。その時代に『新しい住まいの設計』は、いつかはマイホームと夢を膨らませる人たちに向けた、「住」をテーマにした雑誌として創刊されました。有名人のお宅拝見記事が中心になっていましたが、今のように気鋭の建築家の住宅も積極的に紹介していました。

建築家のつくったどのような家を紹介していらっしゃいますか。

ひと言で言えば「これはいい家だから、紹介したい!」と思う家ですね。でも、この「いい家」という概念が難しい。懐かしい木の家がいいと思う人もいれば、今まで見たこともないような自分たちだけの家がいいという人もいる。こちらの側でも、誌面の見栄えを考えると、気鋭の建築家のコンセプチュアルな作品も紹介したくなる。というわけで、読者に選択肢を広く持ってほしいし、紹介する住宅の守備範囲は広いですね。ただ、「家を建てたいと思っている人」が手に取る雑誌ですから、いくらカッコいい家でも、住み手にストレスになるような家は紹介しないよう、気をつけています。

家を建てることって、素晴らしいことだと思うけど、けっこう覚悟がいることだと思うんです。まず、建てる前の段階でもいろいろ考えなきゃならない。誰(建築家)と建てるか?どこに住むか?新しい家でどういう生活をしたいか?もっと言えば、10年後、20年後どう生きていたいか? ほとんどの人にとって、これからの人生を考えるいいきっかけになると思うんです。ただ、将来のことといっても、明るい話ばかりではありませんから、「あなた、そんなこと考えているの?」って、夫婦の危機になった話を聞いたことがあります(笑)。

そんなことがあるかもしれないけど、私たちが取材に行く実例は、本当に幸せな人が多いなと思いますね。この建築家と出会い、この予算でこんないい家が建って、すごく羨ましくなったりすることがあります。でも、このことが大事なんです。私は、家がいいだけではダメで、住まい手も幸せで、満足して暮らしている家であって、初めて「いい家」だと思っています。掲載する家は、そういう視点で選ばせてもらっています。

世の中にはいろいろな家があって、そこにはいろいろな住まい方があります。この雑誌では、さまざまなテイストの家やプランをしっかり見て、住んでいる人の声に耳を傾ける。読むというより、疑似体験をしてもらいたいですね。そして自分たちがどんな家を建てたらいいのか、を固めていってもらえればいいなと思います。

建築家とうまく家を建てるための秘訣はありますか?鈴木さんのお考えを教えてください。

いちばん大きいのは、ウマが合うというか、共通の趣味をもっているとか、コミュニケーションがちゃんととれる建築家と家を建てる、ということだと思います。

プロセスとしては、まず、うちの雑誌などを見て、まずは自分の建てたいイメージをつくる。5年後、10年後にこうしたいって考えながら、自分のストーリーを描いて、できるだけ具体的なイメージをつくる。平行して好きなテイストの家を建てる建築家をリストアップする。

自分なりに建築家のことを調べて、ホームページを見たり、作品を見たり、趣味を知ったり…家も魅力的だし、自分と何か波長も合いそうだと思ったら、臆せずに会ってみればいいんです。

同じ建築家が設計した家でも、いい家と微妙な家があるんですよ。建築家も、コミュニケーションがうまく取れ、建主のことをより多く知ることで、いい化学変化が起きるケースが多い気がします。

すべての人が建築家で建てて幸せになるとは思わないんです。契約から竣工まで、長丁場で向き合っていかなければならない。設備や仕上げで細部にわたって決めなければいけないことが延々と続く。そういうことが煩わしかったり、将来のことを考えるのが面倒な人はあまりおすすめできない。逆に、家に対する思い入れが強くて、家づくりをワクワク楽しめる人、建築家の提案を面白がってポジティブに受け入れられる人には、ぜひ建築家で家を建てて欲しいと思います。

9月20日発売の創刊48周年記念号(2008年11月号)では、建築家 谷尻誠さんに手のひらに載る住宅の設計を依頼。オリジナルメジャーとして特別付録に。

そういえば、「新しい住まいの設計」では、ハウスメーカーの住宅も紹介されていますよね。

はい。ハウスメーカーのコーナーを設けて毎号必ず掲載しています。また、12月号からは、関東と関西の工務店を2件ずつ特集していく予定です。

ハウスメーカーの家にも、いい家はたくさんありますからね。最近はプランニングの自由度も高くなっていますし。ハウスメーカーの家は魅力的です。みんなが欲しいエッセンスをうまく取り入れているから、自分の家のイメージが漠然としていても、住宅展示場などで体感できる。そうすると、こういう生活ができるという実感ができるんです。

だから、2世帯住宅で、親の発言権が強い場合など、ハウスメーカーで建てるほうが後で揉めないかもしれない。

もちろん工務店だって、センスも腕もいいところはたくさんあります。工務店の場合、現場で「やっぱり勝手口が欲しい!」とか、「引き戸がよかった…」みたいなことが気安く受け入れてくれることが多い。こういうことって、工務店の魅力だと思います。

建築家、ハウスメーカー、工務店、どれが一番いいというのではなく、家づくりのベストな方法は、その人の性格や事情によるところが大きいと思います。

建築家コンペによる家づくりも、毎号掲載されていますが、プロデュース会社が仲介に入る形はどのように捉えられていますか?

建築家コンペで建てる人は確実に増えています。家づくりって、ほとんどの人にとって初めての経験ですから、迷うことも多い。建築家コンペではカウンセリングをしてイメージを引き出してくれて、絞り込まれた建築家たちのプレゼンも受けられる。設計図や見積もりのチェックなどもサポートしてくれる。そこまで考えると費用的には決して高いとは思いません。建築プロデュース会社の形態はさまざまですが、今後とも建築家で家を建てようと考える人で、プロデュース会社を利用する比率は高まっていくと思います。

今後の「新しい住まいの設計」はどこへ向かいますか?

創刊した48年前とは時代が変わっています。家の選択肢も、借家か持家か、持家なら戸建だけでなくマンションもある。新築かリフォームかという選択肢も。月刊住宅誌で建築家の上質な住宅、それも実際に建主の暮らしまで垣間見れる雑誌は『新しい住まいの設計』だけになってしまいました。それは逆に、「いい家を建てたい」と思っている人が、まず手に取るオンリーワンの雑誌としての価値は高まったと思っています。ですから、建築家が建てた上質な実例、建主の思いや、家づくりの物語をきっちりと紹介していくというスタンスは変わりません。

紙だけでなく、2007年の夏からは電子雑誌もスタートしました。いつでもどこでも読めて、全文検索機能なども便利で、この形態での読者も増えていくと思います。また、住まいウェブで、情報を補完しあい、コンテンツもデータとして有意義な形で残していきながら、たくさんの人の手に情報が届く流れをつくっていきたいと考えています。

新しい住まいの設計とは?

新しい住まいの設計2008年11月号
出版社 扶桑社(2008/09) 1000円

1960年に創刊した月刊住宅誌。その時期に旬の建築家が設計した家の住宅特集をメインに、建材・設備やハウスメーカーの新商品の紹介など、家づくりを多面的にサポートする。最新号(11月号)では、48の建築事務所の建築家を紹介する。また「建築家のマトリックス図」などユニークな切り口で、建築家選びをサポートする企画が満載。「新しい住まいの設計Web」でも誌面の一部を連動して公開している。

鈴木康之(すずき やすゆき)氏

1960年生まれ。学習研究社を経て95年に株式会社扶桑社に入社。婦人誌、生活実用誌の編集を経て、2001年より「新しい住まいの設計」の編集に携わる。2005年より同誌編集長をつとめる。「住宅の手触り-12人の建築家による、24軒の手触りのいい家-」(扶桑社刊)など、住宅に関連する単行本の編集も担当。

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