パッと見と凝視

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2010年08月30日(月) 08時00分

■一人暮らしを始めるとき、ワンルームマンションやアパート

 を探すにあたって、一般的には何を重視するのでしょうか。

 エリアの決定に始まり、最寄駅からの距離。部屋の広さ。

 間取り。家賃。設備。日当り。外観。などなど。

 外観はそれほど気にしないかもしれません。選ぶ人によります

 が。

 それでも設計者は外観にこだわります。

 今回はそんな感じのお話しを少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■パッと見と凝視

 今、とあるコンペ案を考え中である。

 用途はデンタルクリニック併用のワンルームマンション。

 収益物件なので、容積率を出来る限り使い切ることを前提条件
 として、デザイン性が優れているものを望まれている。

 容積率とは、敷地面積に対しての延べ床面積の割合をいう。

 ここには、各種斜線制限や日影規制・各居室の採光率や駐車場
 率・駐輪場率・ゴミ置場の面積や空地率など、条例によって事
 細かく規制が定められているので、それらをクリアしつつ、容
 積率を高めていく形態なりプランなりを施していく必要がある。

 まあ、平たく言えば、単純に積み上げればよいというわけでは
 ない。

 そういった諸条件を加味しながら、一つのカタチに集約させて
 いくわけであるが、街並みに最も影響を与えるのは外観となる。

 マンションやワンルームマンションという建物は全国各地に存
 在する。そのいずれもが、概ね上記のような条件をクリアして
 建っている。住宅とは違い、大抵高さ方向にボリュームが大き
 く、それだけでも圧迫感を与えてしまう代物である。そして、
 平面的には異なるプランが連続するものの、上下方向にはそれ
 らの繰り返しが積み上げられるため、外観の変化が乏しい建物
 になりがちである。

 色によって分節を試みたり、若干の凹凸によって陰影をつけた
 り、階層によって仕上げを変えることで、変化を与えようと試
 みているものもあるわけだが、表層の操作にとどまるため、全
 体の印象としては、それほど効果が出ていないと感じるものが
 多い気がする。

 主にマンションは、デベロッパーが事業主となって、その折々
 の世間の風潮やニーズを汲み取ったカタチで、ある意味ソフト
 面の充実を図ろうとしつつも、敷地の購入代金+建設費用の総
 額を上回るカタチで売却価格や賃貸価格を決定しているため、
 建築物としての価値よりも経済面の価値を重要視することは否
 めないと思う。

 しかしこの分野でも、建築家が活動/設計し、今までにない概
 念や形態を世に送り出しているのも事実であり、新たな価値観
 を創出すると共に、新たな住み方を提案しているのもまた事実
 としてある。

 デザイナーズマンションという言葉が数年前に流行ったが、中
 には言葉だけのまやかしに見えなくもないものも確かに存在し
 ていた気がする。デザイナーは名乗った瞬間にデザイナーにな
 り得るので、耳障りも良く、各地で連発されていたようにも思
 う。

 そんなワンルームマンションという代物。プランを考えている
 といつものごとく、街中で見かけるワンルームマンションらし
 き建物に自然と目がいく。

 そして、こう思った。

 パッと見は大事だ。と。人は数秒で見たものの印象を決定して
 しまう。ファーストインパクトというやつである。この瞬間に、
 凝視するか否かが分かれるようにも思う。凝視して見ようとい
 う意識にさせるものは、大抵パッと見が優れている若しくは単
 に見たことがない形態や色使いをしているものである。

 優れているものとは、殆ど主観の領域によるものではあるが、
 その街並みに溶け込んでいたり、全体に落着いていたりするも
 のの方がかえって良く見える気がしている。変に主張している
 ものは確かに凝視してしまうのだが、それは上述のものとは異
 なり、街並みに異質なものが紛れ込んでいるからというのが主
 な理由である。

 溶け込んでいる。ということと、特長がないということとは勿
 論同義ではない。溶け込みつつ、特長を持つもの。それが、パ
 ッと見で意識を持っていかれ、その後凝視するという流れにな
 る。

 凝視に値するものは、恐らく充分に練られた建物である。そし
 て、その前のパッと見による意識への訴えも備えた建物だと思
 う。

 それが本当に優れているかどうかは、実際に中に入ってみたり、
 住んでみたりしないと分からないのも事実だが、「中を見たい」
 「住みたい」と思わせる力を有することもまた、事業主は求め
 ていることである。その点でもパッと見は結構重要だと感じた
 次第である。

 見た目のインパクトに走るのではなく、溶け込みつつも「中に
 入りたい」「住みたい」と思ってもらえるようなものを目指し
 て、今回のコンペに挑みたいと思う。
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■編集後記

 インパクトを抑えつつ、印象を強めることができるかどうか

 は分かりませんが、インパクトのありすぎるものは、すぐに

 飽きてしまう気もしますし、時代の流れによっては取り残さ

 れやすい気もします。あくまで個人的意見ですが。

 長い時代を乗越えられるものは、インパクトを抑えつつ、印

 象を深めることが、どうしても必要な気がします。

 なにもワンルームマンションに限った話しでもないのですが。

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■発  行:空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所
      (くうかんこうぼう ようしゃこうぞう)
 住  所:〒602-0914 
      京都市上京区室町通り中立売下ル花立町486
 連 絡 先:TEL/075-432-3883 FAX/075-334-8051

 H  P:http://yosyakozo.jp
 E-mail:info@yosyakozo.jp

 長く建つ。それは建築に課せられた使命でもあります。

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建築家プロフィール

名前 河野太郎 +村西弘至
設計事務所 空間工房 用舎行蔵
エリア 京都府の建築家
コンペの採用実績 吹田市S邸

京都府の建築家 河野太郎 +村西弘至

河野太郎 +村西弘至さんの建築 河野太郎 +村西弘至さんの家具


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